地の巨人 立花隆さん、逝去  「脳死三部作」の思い出

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「知の巨人」と呼ばれる人はたくさんいらっしゃる。

吉本隆明、南方熊楠、最近では荒俣宏さんもそうでしょうか。

私が実際に著書を読み、感心した人物となると立花隆さんになります。

 

脳死三部作

 

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最初に出合ったのは、看護師の姉の本棚にあった、分厚い「脳死」の本でした。

あれ、立花隆って、文系、社会学系の物書きではなかったかな?

なぜ彼が脳死を書いているの?

あとから、立花隆に関して理系だ文系だ、という分類はまったく意味をなさないとわかるのですが、このときはそんな反応でした。

数年後、その脳死を読み始めました。

上にあげた「脳死三部作」と言われる「脳死」「脳死再論」「脳死臨調批判」です。

 

それらは、

脳死は人の死なのか

を国が法制化する過程の解説と、立花氏自身の主張を交えた本です。

 

立花氏は医者ではなく、医療を学んだこともないはずですが、よくぞここまで調べたな、というのが私の感想でした。

そして、私も医療は知らないですが、脳死とは何か、何が問題なのか等がよくわかる力作でした。

以下、せっかくなので、脳死について触れておきます。

私なりの書き方で、しかも当時のかすかな記憶からの文章ですので、間違いもあるかもしれません。ご容赦ください。

 

脳死は、漢字のとおり脳が死ぬことです。

それを定義する必要が出てきました。

なぜなら臓器移植を行なうことを推進するためです。

 

心臓が死んだら、臓器も死ぬ。だから、臓器移植は難しい。

【心臓死→臓器も死ぬ→臓器移植はできない】

 

が、脳死の定義の仕方によっては、心臓死よりも前にやってくる。

【脳死→臓器が有効の間に臓器移植→心臓死】

 

なので、脳死をヒトの死としてしまえば臓器移植がやりやすくなる、というわけです。

事故などだと、脳死の方が先にくることはありえます。

が、脳死はヒトの死なのか、どういう状態が脳死なのかをきっちり定義しないとよくない。

なぜなら、脳死はざっくりいうと、脳は死んでいるけど心臓は生きている状態。一生懸命、延命措置や治療を続ければ復活する可能性がある。

 

日本における臓器移植を遅らせることになるきっかけを作った事件があります。

札幌医大の医者であった和田寿郎による「和田心臓移植事件」(リンク先はWikipedia)。

ドナー(臓器を提供する人)は溺水事故を起こした男性、レシピエント(臓器を提供してもらう人)は心臓弁膜症の患者。

この事件では、ドナーの脳死判定は適正だったか、そもそもレシピエントへの心臓移植は必要だったのか(他の方法で直せたのではないか)など多くの疑問が噴出。しかもそれらの証拠がなくなる・証人も亡くなるなどして、疑惑の追及はできなくなりました。

 

脳死とはどんな状態ならいいのか。

そもそも、心臓が動いている状態を人の死と認められるのか。

臓器移植の必要性はわかるが、どう折り合いをつけるのか。

などなど、脳死や臓器移植は、様々な議論の余地のある問題です。

 

このような問題に、立花氏は果敢に挑みました。自分なりの主張もされます。

確か、この本で説明、主張されるほどに、脳死に詳しい医者は少ない、とまで言われたドキュメントだったのでした。

立花氏は、自分なりの主張さえも提供します。

 

脳死は、可逆的な死(機能死)ではなく不可逆的な死(器質死)とすべし、と。

可逆的な死とは、まだ復活する可能性のある死ということ。

低体温療法だったっけな? 復活する治療法を模索し続ける医療もありました。また、年齢が低い子どもは、脳が復活する可能性が高い。

そういうことから、不可逆的な死、つまりもう復活しない状態、具体的には壊死などの状態になった死を脳死とすべきだ、と立花氏は主張しました。

結局、現代に至るまで、脳死のはっきりした定義とか、臓器移植のための厳格な手順とかは定まっていないらしく、また臓器移植そのものも期待されたようには増えていないらしいです。

 

世に知られることになった「田中角栄研究」

立花隆氏に対し文系か理系かという区分はまったく意味をもたないのですが。

先にかかげた、

文系の立花隆が、なぜ脳死を書いた?

の疑問のもとになったのは、田中角栄研究です。

私にとっては、田中角栄についての本を書いた人という印象が強い人でした。

 

立花氏が著した「田中角栄研究」が、田中首相退陣のきっかけとなったと言われるほどでした。

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現代の政治家、特に安倍内閣や菅内閣は、田中角栄の悪事よりずっと悪いこと、根源的に政治家にあるべきではない姿を示していると思うのですが、果たしてジャーナリズムは立花氏個人の仕事に匹敵する仕事をしているか、していない。

いくらでも突っ込みどころはあると思うのですが。

 

強いて言えば、週刊文春くらいでしょうか。

(ま、硬軟含んだ、フィールドの広い雑誌ですが)

 

 

立花隆という人間の面白味

立花隆という人物も魅力的でした。

 

立花さんの読書はすさまじかったらしいです。

そりゃそうですよね。すさまじい取材や調査だったらしいですから。

蔵書が10万冊、あまりに本が重いので、本のためだけのビル(通称、猫ビル)を建てるまでにいたります。

 

立花さんの興味は、確か性産業にまで及んでいたと記憶していたと思います。

立花さんが教えてくれたサイト(忘れた。今で言う、Pornhubみたいな存在のサイト)でしばらく楽しめたのは、感謝です(笑)。

 

立花さんの秘書を長くつとめた方の本も読んだことがあります。

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知的欲求の赴くままに、様々な分野に徹底的な調査と思考、著作を深めてきた立花隆さん。

彼の本を読むというより、彼自身を知るために本を読んだという方が近い。

ありがとうございました。

合掌

 

【追記】2021/06/29

毎日新聞に、立花さんのインタビュー記事が出てました。

ジャーナリストの条件について論じた立花さんの文章のなかに、「それは何事についてもすぐに半可通になれる能力」を持っていることだという一節があった。

半可通、なるほどなあ。

深いな。

 

 

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