「全員経営」という本を読みました。
いくつかの企業の実例を、ドラマ仕立ての文章を交えながら、企業経営を紹介している本です。(企業以外にも防災教育といったネタもあります。)
経営者のみならず、というか、むしろミドルマネージャー、いわゆる中間管理職に参考になるんじゃないかと感じました。
社会環境や消費者の変化はますます激しくなってます。その変化の予測も万能ではなく、不確実性の時代です。
日本はこれまで、欧米の経営の仕組みにシフトしてきました。しかし、現代にそれが通じるかといえば、そうでもなく、行き詰っているといえるのではないでしょうか。
逆に旧来の日本型の経営スタイルが生き延びている、あるいは復活してきている事象がある。たとえば、終身雇用制・年功序列。必ずしもそれらの仕組みそのものがよいと言えるわけではないかもしれないが、これらとあわせて情報の開示や、階層をなくしたり自由闊達に意見を述べ合う仕組みとあわせて機能し、企業活動の生き延びる事例が発現している。それらが本書で紹介されています。
メガネ21は、その端的な例。形式的な社長は存在するが、権限は委譲され、全社員がお客様のことを考え、接遇し、営業する。お客様にとって必要、あるいは幸せと感じられると思われることを実行する、という組織形態なのだそう。
ヤマト運輸は全国規模の大きな会社で、ヒエラルキーも存在しますが、孤独死を目の当たりにしたSD(セールスドライバー)が発案した事業が、上司、その上司や社協、行政を巻き込みながら確立されていきます。
本書を読んで直観的に思い浮かんだのは「三方良し(さんぽうよし)」という言葉。
「三方良し」とは「売り手(企業)良し」「買い手(消費者、お客様、取引先様)良し」「世間良し」の三つの「良し」。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるという、近江商人の心得のことです。
自分たち(企業側)のお金儲けだけ考え利益を追求する活動をしていたら、消費者は離れ、売り上げは伸びない、そして継続性を失う。そうではなく、お客様にとって良いことを実践する、社会がより良いものに変わっていく、お客様や社会にとって企業の存在価値が高まる、企業のブランドが認知・確率される、売り上げは伸びる、企業活動が継続できる、という循環となります。
また、紹介されているいずれの事例もトップ(実質的に階層の存在しない企業もあるが)から最前線にいる社員まで、全員がお客様にとって魅力のあるものは何か、自分たちは何ができるかを考え、行動しているということです。その様子は、既成概念にしばられず、失敗をおそれず、あるいは本能に従い行動している。
つまるところ「一人ひとりが、自分の頭で考え、実践する・実行する」、それを企業が全力でサポートする、それが、これからの不確実性・不透明性の社会・マーケットで継続的に発展していく企業のあるべき姿なのだろうと感じます。
最後に、この本で紹介されている企業の1つに、三鷹光器があります。
決して大きい規模ではない会社ですが、NASAに採用されるカメラを作ったりしてます。採用試験も独特です。どんな採用試験をしているかは本誌を読んでいただくこととして、この会社を作った創業者の話が面白いです。以下のサイトをご覧ください。
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