はじめに
面接対策をすればするほど、落ちるようになった。
そう感じたことはないでしょうか。
想定問答集を作り、志望動機を磨き、自己PRを何度も練習した。それなのに結果は変わらない。むしろ準備すればするほど、何かがズレていく感覚がある。
その感覚は、正しいのです。
私は人事の仕事を30年以上続けてきました。その中で、正社員・契約社員あわせて4桁を超える人数の採用面接に関わってきました。新卒も、中途も。
断言できます。面接で落ちる人の多くは、準備が足りないのではありません。準備の方向が、面接官の見ているものとズレています。
このnoteは、その「ズレ」を埋めるために書きました。
転職エージェントのマニュアルでも、就活サイトのハウツーでもありません。4桁の面接現場で実際に見てきた「受かる人と落ちる人の差」を、現場にいた人間として書いています。
きれいな回答より、下手でも自分の言葉で話す人が受かる。
その理由を、これから説明します。
著者について
新卒から一貫して総務人事の仕事を続け、現在58歳。採用・労務・ハラスメント対応・メンタルヘルス対応など、人事労務・総務全般の実務、中間管理職をひととおり経験してきました。
製造業の人事担当として採用に関わってきました。お客様が店頭で選ぶ際に当社の製品を選んでほしい。ですから、私なりの採用面接哲学がありました。
「不合格になった応募者も、自社ブランドのファンであり続けてほしい」
というものです。そのため不合格通知の文面から、面接会場での対応まで、できる限り丁寧に設計してきました。
その経験の中で気づいたことがあります。丁寧に接すれば接するほど、「惜しかった人」がよく見えてくるのです。あと一歩で受かったのに、なぜ落としたのか。その理由を、採用する側として何千回も考えてきました。
このnoteに書いたのは、その積み重ねです。
第1章 面接は、ドアを開ける前に半分終わっている
多くの方は、面接が「面接室のドアを開けた瞬間から始まる」と思っています。
違います。
面接は、受付に来た瞬間から始まっています。
受付で「本日面接のお約束をしております〇〇と申します」と言えるか。受付担当者に対して、横柄な態度をとっていないか。案内されて待っている間、スマートフォンをいじっていないか。
こういった「普通のことが普通にできているか」を、採用担当者はさりげなく確認しています。(確認しているというより、その光景を自然ととらえ、評価のポイントの一つとしている、と言った方がいいかもしれません)
理由はシンプルです。面接室での受け答えは、事前に準備できます。しかし受付での態度は、準備しにくい。素の人間性が出やすい場面です。「この人は一緒に働いたとき、取引先や社内の人間にどう接するか」を、面接官は無意識に受付での行動から読もうとしています。
服装も同様です。高価なスーツである必要はありません。「清潔感があるか」「場に合った服装か」、それだけを見ています。「普通の感覚を持っている人間か」の確認です。
受付、待合室、服装。面接室に入る前のこれらの場面で、「普通のことが普通にできているか」の確認は、すでに終わっています。
では、面接室に入ったあと。あなたが回答しているまさにその時間に、面接官の頭の中では何が起きているのか。
次の章では、その内側をお見せします。
第2章 面接官があなたの回答を聞きながら、頭の中でやっていること
面接官は「採点」していません
第1章で、面接は受付から始まっていると書きました。この章では、面接室の中──あなたが回答しているまさにその時間に、面接官の頭の中で何が起きているかをお見せします。
多くの方は、面接官が項目ごとに点数をつけながら聞いていると想像しています。志望動機20点、自己PR20点、といった具合に。
実態は違います。少なくとも私が30年やってきた面接は、採点ではなく「判定と確認」でした。
面接官は、あなたの回答の内容を聞きながら、同時にもう一つのことを判定しています。
「今の言葉は、この人の中から出てきたものか。それとも、どこかから持ってきたものか」
この判定は、内容の良し悪しの判定より先に走ります。なぜなら、借り物の言葉だと判定された回答は、内容がどれだけ立派でも証拠として使えないからです。その人の実像を映していない情報に、合否の根拠を置くわけにはいきません。
「きれいな言葉」が引き金になる瞬間
では、どんなときに「借り物だ」と判定されるのか。
引き金になるのは、言葉のきれいさです。
よどみがない。速い。整っている。そして「主体的に取り組み」「チームで成果を最大化し」「御社の理念に共感し」といった、どこかで聞いた表現が続く。
面接官はこれらの言葉を、何百回、何千回と聞いています。応募者の口からこの種の言葉が滑らかに出てきた瞬間、面接官の頭の中で、静かにモードが切り替わります。
確認モードです。(掘り下げ、とも言います)
表面の言葉の奥に、本当の経験があるのかどうか。それを確かめるために、質問が一段深くなります。
「今のお話、もう少し具体的に聞かせてください」
「そのとき、周囲の方はどんな反応でしたか」
「なぜ、その方法を選んだのですか」
お気づきでしょうか。もしあなたが面接で「話の途中から、やたら細かいことを聞かれるようになった」経験があるなら、それはおそらく、この切り替えが起きた瞬間です。
そして重要なことを一つ。この深掘りは、あなたを落とすための罠ではありません。面接官は本物であってほしくて掘っています。掘った先に実体験の手触りがあれば、面接官は安心して評価を戻します。逆に、掘った先で急に言葉が貧しくなったとき──台本の外に出た瞬間の落差こそが、「借り物だった」ことの動かぬ証拠になるのです。
準備してきた人ほど、この構造にはまる
ここまで読んで、苦しくなった方がいるかもしれません。
想定問答集を作り、模範回答を磨き、暗記してきた。その努力が、そのまま「きれいな言葉」を生み、確認モードの引き金を引き、深掘りで崩れる。真面目に準備した人ほど、はまりやすい構造になっているのです。
これが、「はじめに」で書いた「準備すればするほど落ちる」の正体です。
あなたの努力が足りなかったのではありません。努力が、面接官の判定の仕組みと逆向きに積み上がっていただけです。
では、その仕組みを前提にしたとき、落ちる理由は結局どこに集約されるのか。次の章で、30年分の結論を申し上げます。
第3章 あなたが落ちた理由は、たった2つしかない
4桁の面接から言える結論
正社員・契約社員あわせて4桁の人数の採用面接を経験しました。その合否を思い返して、落ちた方々の理由を突き詰めていくと、最後には2つしか残りません。
理由1:自分の言葉で話していない
第2章で書いたとおりです。借り物の言葉は証拠になりません。面接官が知りたいのは「この人はウチに入ったあと、どう考えどう動く人間か」であり、その唯一の証拠が、あなた自身の中から出てくる言葉と経験です。それが確認できなかったとき、面接官は判断材料がないまま会議室に戻ることになります。判断材料がない人を、会社は採れません。
理由2:「なぜウチなのか」が見えない
もう一つがこれです。経歴は申し分ない、話しぶりも悪くない。それでも、この会社で働きたい理由、この会社で働いている自分の姿が、回答のどこからも立ち上がってこない。
面接官は、あなたの志望動機を聞きながら、必ず頭の中で競合他社の名前を思い浮かべています。「今の理由は、ライバル会社の面接でもそのまま言えるのではないか」と。そのテストを通らなかった志望動機は、嘘だと責められることすらなく、ただ静かに消えていきます。残るのは「ウチである必要は、ないのだな」という判定だけです。
つい最近、SNSで「志望動機を聞くの無駄。こうやって面接に来てるんだから、志望してるに決まってるやろ」という主旨の投稿を見かけました。いや、聞くんです。それ重要なポイントなんです。
これまでの不合格を、この2つで振り返ってみてください
技術的な巧拙、緊張、逆質問の出来──細かい要素はいくらでもありますが、それらで合否がひっくり返った場面を、私はほとんど見たことがありません。ひっくり返るのは、いつもこの2つです。
あなたのこれまでの面接を、思い返してみてください。
途中から質問が細かくなった面接はなかったか(理由1のサイン)。「他社も受けていますか」「なぜ弊社ですか」の後、面接官の相槌が薄くなった面接はなかったか(理由2のサイン)。
心当たりがあるなら、それは朗報です。原因が特定できたものは、直せるからです。
ここまでで「理由」はわかりました
あなたが落ちた理由は、この2つのどちらか、あるいは両方です。
ここまでで「理由」はわかりました。しかし、落ち続けた人が、次の一回で変わるために必要なのは、理由ではなく「明日の面接で、何をどう変えるか」です。
ここから先は、それだけを書きます。
沈黙して受かった人の話。準備を捨てずに「準備した」とバレなくする方法。面接官が納得した人と、静かに見送られた人の違い。そして、あなたが会場を出たあとの合否会議で、「惜しい人」が実際にどう語られているか。
すべて、私が現場で見てきたことだけを書きました。
続きはこちらをご覧ください。



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