JR西日本の事故防止策は効果を出せるか、お手並み拝見

NHKが報じていた。
JR西日本は、ヒューマンエラーを罰しないこととした、と。(非懲戒という表現)

 

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理由は、罰することにしていると、エラーの情報が隠されてしまう。本当に事故を起こさないのであれば、エラーは隠さず表に出し、その対策を打つ。そうすべきだ、と遺族の一人が主張したようだ。

そのとおりだ。そのとおりなのだが、残念ながら、この考え方を導入した鉄道会社はJR西日本だけなのだという。

鉄道会社ならしょうがない点もある。人の命を預かっているから。

意図しない、小さい規模の事故ならまだしも、意図したもの、あるいは意図せずとも大きな事故を起こし、人命にかかわる、あるいは障害を残してしまう、建物の損壊などが生じる事故であれば、ただではすまない。

そのようなヒューマンエラーならわかる。それは法律上の罪にもなる。故意や怠慢も罰する対象だろう。

でも、そうではないエラーなら積極的に顕在化させるべき。

 

 

 

ハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則というのがある。

 

ハインリッヒの法則
ハインリッヒの法則

 

 

 

 

 

 

 

 

重大な事故・災害の背後には小さい事故がたくさんあり、さらにその事故の背後には事故にまでいたらない「ヒヤリハット」というものが存在するというもの。
統計的に、大事故1件:小さい事故29件:ヒヤリハット300件と言われてます。

これを発見したのが、当時保険会社に勤めていたハインリッヒさんです。そこでハインリッヒの法則と言われるようになりましたとさ。

 

 

 

ヒヤリハットとは

 

ヒヤリハットとは何かを説明しておきます。

言葉のとおり「ヒヤリ」としたこと、「ハッと」したことです。

階段を踏み外し、落ちそうになったと「ヒヤリ」としたとか、包丁をうっかり落としてしまい足をけがしそうになった(足を動かしたのでけがまでは至らなかったが)というような事例です。

そういうのをまとめて、ヒヤリハットといいます。

 

 

 

ハインリッヒの法則とヒューマンエラーの非懲戒の関係

 

話を元に戻します。

JR西日本はなぜヒューマンエラーを非懲戒にしたのか。

それは、ヒューマンエラーをたくさん顕在化させることが事故防止につながるから、と考えたのです。

大きな事故が起きるまでには、ヒヤリハット(つまり、ヒューマンエラー)が300件あるわけです。ヒューマンエラーをたくさん表に出し、つぶす(情報を共有し、対策も打つ)ことにより、小さい事故を起こさない、それがいつかは大きい事故も起こさない、ということになるわけです。

 

たとえ話にすると。

 

●おしゃべりしながら階段を下りていたら、階段を踏み外そうと「ヒヤリ」とした
という事象を共有する
→みんなが階段を上り下りするときは人とおしゃべりなどせず、足元を確認する

といった対策をみんなが実行するでしょう。そうすれば事故の発生は防げます。
「なんだ、その程度のこと?」
と感じる人も多いでしょうが、大きな事故とはしょせんそういうものの集積なわけです。それが、ハインリッヒの法則の要諦です。

だからこそ、JR西日本がヒューマンエラーを非懲戒にしたわけで、それは大きな意味があります。逆に、なぜ今まで懲戒にしていたかが不可解。

 

 

 

私の経験

 

私が社会人になって最初の職場はモノづくりをするところでした。

災害が少なくなかった(といっても、不休災害や微小災害(休業まで要しない、あるいは救急箱の手当で済んでしまう程度の小規模の災害が年に2~3件ほど)ので、事故防止のためにはヒヤリハットを出そう、と懸命でした。

 

  • ヒヤリハットを出そう…(どんどんヒヤリとしたり、ハッとした経験をしよう、という意味ではなく)ヒヤリとしたことがあったら、隠さずにみんなで共有しよう
  • 災害を出したとしても、隠さずみんなに共有しよう

 

特に後者については、会社が「大きな災害が出る前に、あなたに小さい災害にあわせてしまってごめんなさい。でも、あなたのおかげで事故が発生することがわかり、その対策を打つことで大きな災害を起こさないようにする取り組みができます」という考え方です。

当時もそうだったし、今ではほとんどの事業、職場でこのような考え方をしているんじゃないでしょうか。

 

 

事故・災害を隠す風土が昔はあった

 

過去には、事故や災害を隠す風土がありました。

労働災害・通勤災害です。

 

これらは、仕事中、あるいは仕事への通勤途上に災害が起きたら、その費用(治療費など)全額を国が保険として負担、その保険料は会社が全額を負担する仕組みです。

災害が多ければ多いほど保険料は上昇します。なので、特に中小企業は保険料の負担が経営を圧迫するので、なるべく低額に抑えたい。なので、無言の圧力で、あるいは言葉に出して「災害を起こしても労働災害の申請はするな」と要求してきた歴史があります。今でも続いているかもしれません。

そのような風土・歴史がありましたから、古い従業員の中には「災害は黙っておこう」という意識が働くという事情もあります。

 

でも、真剣に災害をなくそうと思ったら、ヒヤリ・ハットをどんどん表に出す、ヒューマンエラーは明らかにする。

 

ヒューマンエラーで懲戒するなんてとんでもない。

 

さあ、JR西日本のお手並み拝見。

そして、他の鉄道会社もこれをどしどし導入すべし。